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【バガブー・ログ】
全身を黒鉄の甲冑で耳を包んだ人物。
もはや正気はなく、破壊衝動に身を任せて、眼に入ったモノを破壊するだけの狂人。
何らかの選別基準があるらしく、破壊対象と指定しなかったものには見向きもしない。
―
「戦闘能力の有無」「戦闘意思の有無」が、破壊対象選定の基準に関わっている。
また非常にたどたどしいながらも若干の会話が可能。
嗚咽めいた普段の鳴き声と不快な「ザラみ」を含んだ、老若男女判別つかぬ「音」めいた声。
―
「嫌なものを壊す」と語る。
それは、被害妄想が度を過ぎた故に、身を守る為に己に害する可能性がある「戦うもの」を廃絶しようと動き始めたもの。
追い詰められた子供の恐慌状態のように、我武者羅に己の身を守ろうとした結果の、狂気。
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しかし、無機物にまで破壊を及ぼす理由は、そこにない。
正気と呼べるかどうかはともかく、いくばくかの知性があり、また破壊の為の美学があり――少しずつ、知性を、理性を、学習しているのかもしれない。
―
イグナート氏の奮闘の結果、バケモノは捕らえられた。
――氏の命と引き換えに。
【バケモノの物語】
ある傭兵が用いていた黒鉄の鎧。
傭兵は度重なる戦いの中で徐々に常軌を逸して行き、
破壊を嗜好するモノになってしまった。
傭兵はそんな自分を危惧して、葛藤の末に自らその命を絶った。
あとには傭兵の愛用した鎧だけが残った。
鎧には傭兵の狂おしいまでの破壊衝動がこびり付いて残留していた。
母親に捨てられた子供がいた。
当人には理由なんてわからなかった。
それは実際には、虐待の過去を持つ母親が、
今度は自分自身が我が子に同じ暴力を振るう事を恐れた結果、
子を突き放す事で守ろうとしたという最後の良心の形であったにしろ。
それを子供が知る由もない。
やがてただただ周囲を恐怖としてしか見られなくなった子供が、
その身を守るために手を伸ばしたもの。
破壊衝動のバケモノは行動力と志向性を得た。
鎧は無差別の破壊を促し、
子供は鎧の力でその身を守ろうとした。
自分を守る為に他者を破壊しようとする狂人が生まれる。
どちらもが最後に優しさを垣間見せた暴威の果て。
須らく、上手くはいかなかった不器用な感情のお話。
狂人が出会った優しいひと。
その言葉は、狂人ではなくなったその子に何を残す?
拘束されたバケモノは、尋問の時を待つ。
【尋問、その後】
自分が捨てられた子であり、
身を守る為にバガブーという名の呪われた暴威を身につけた、という事、
イグナート氏の最後の言葉を聞き届け、それを遵守する事を誓う事、
…そして本心では己は罰されるべきだと強く思っている事。
もろもろを治安部隊に打ち明けた。
まだ幾らか自棄かつ自虐的で、子供のふりをするところがある。
尋問など真面目な話をする時に「素」である冷静な振る舞いを取り戻す。
拘束を緩めてもらいつつもおとなしく檻に身を置き、
更なる尋問や、最終的な処罰を待っている。
【交霊とぬいぐるみと】
交霊という手段で故人である氏と再会し、伝えたい事を伝えきる。
幽霊となっても元気そうな事に安心したような奇妙な感覚に襲われつつも、新たな目的を見出す。
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