「CLOSET CHILD」
CAST:わたし(うそつき)
妹(押し込まれている)
ママ(鬱気味)
パパ(ウテウテブギウギ)
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街中を歩けば色んなひとに出会う。みんな幸せそうで。
それはわたしの理想像。わたしもこんな風に幸せになるのだという綺麗な奇麗なわたしの夢。
憧れながらわたしは大きくなる。
憧れは憧れのまま風化して夢は夢の中で見る儚い夢になってついには叶わなかったわたしの理想。
――パパはいつだってわたしの味方。わたしの全て、掛け替えのないひと。
パパはいつもわたしを愛してくれている。だからわたしもパパを愛している。
それしか縋る腕がないから。わたしはいつもパパの腕の裾を掴んで離さない。
その袖がわたしには蜘蛛の糸に見えるのか、ただ愛しいのか。
それはわからないけど。
でも今はただ、この裾を、パパを、愛していればいい。盲目的にでもいいから、それだけ信じてればいい。
そうすればパパはわたしを愛してくれる。だからわたしもパパを愛する。
それでいい、それで幸せ。パパもわたしはパパに縋るしかないってわかってるものね?
あ、パパがお仕事から帰ってきたわ。「お帰りなさい パパ」
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毎夜毎晩繰り返される3時間ウテウテなわたしの父と泣き笑いのわたしの創作ダンス繰り返される3時間ぐるぐるじたばたの惨事姦今日もわたしと明日もわたしが楽しそうなパパとウテウテ気味にそしてあの子がクローゼットを叩くのです
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ママの話をしよう。ママは若い頃に片腕をなくした、隻腕のひとだった。
だけどそんなコトを気にも留めず、健気に振舞うひとだった。料理が得意で、片手で器用に料理を作って振舞った。
わたしはママが好きだった。ママは「パパなんかいなくたってわたしがちゃんと育ててあげるからね」といつも言った。
わたしにはパパがいなかった。物心ついたときから、既にいなかったと思う。
それがなぜなのか不思議に思わなかった。それで当たり前だと思っていたから。気にする必要もないことだった。
だって、ママが居なくてもいい、って言うものだから。わたしにはパパなんて要らないと思ってた。
そんなママが「パパ」を連れてきたのは――とても意外だった。
俯いて、消え入るような、死んでしまいそうな。そんな声で。
ただひとこと「…パパよ」とだけ紹介した。その男は、とても爽やかで、澄んでいて。
純度が故に有害な水のような笑顔をしていた。
それからパパと一緒に、知らないひともわたしの家族になった。わたしによく似たひとだった。
ママは疲れきった笑顔で「あなたのおxxxxxよ」と教えてくれた。
けれど、その時のわたしにはそれがよくわからなかった。
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毎夜毎晩繰り返される3時間あのこがずっとないてるパパと一緒にないてるナニも見えない3時間どすどすばたばたの3時間今日もあのこと明日もあのこが悲しそうでパパと踊り狂う水の音の中でわたしはずっとクローゼットの中から、隙間に眼を当ててずっと見ていました次の日はいつも吐き気の朝
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日に日に「ママ」はやつれていきます。新しい生活に慣れないのかもしれません。
そう思うたびにわたしはとても気が引けるような、迷惑をかけているような申し訳なさに打ちのめされるのです。
だからわたしは言ったのです、「パパ、もっとママと仲良くなってあげて」って。パパは喜びました。
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ウテウテブギウギママパパママパパ笑ってる笑ってる叫んでる叫んでる笑ってないよ笑ってる叫ばないよ叫びすぎてるありがとうありがとう? ???? ? xxxx沙汰のシーソーゲーム発狂絶叫嘔吐嘔吐蛆虫さんこんにちはわたしは何も言わずに踏み潰す嫌いになりたい嫌いになりたいママパパママパパ嫌い嫌い大好き嫌い死んで欲しい大嫌い大嫌いもう逃げない忍ばせた忍ばせてるアレをママママウテウテ嘔吐胚胎覚醒覚醒バイバイバイバイバイバイバイバイ
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パパは喜んで、わたしの提案を褒めて、頭を撫でてくれました。アノ子もきっと、これでみんなが仲良くなって、安心してくれるよね? いつもソコから見ていてくれてるものね?
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「忘れてあげる」だからそれで全てを終わらせよう、ねぇパパ?
ママが怒り狂ったアノ夜にわたしは全てを知りました、全ての意味を知りました。
薄々わかっていたのだけれど。
パパはいつでもわたしではなくわたしの入れ物が大好きだったのね? それでもいい、それでもよかったんです。
クローゼットの中のアノ子は今日はクローゼットの外。
パパはこの世の外。わたしはうそつきなりました。
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パパは、ひとえに言うと…人でなしだった。
自分より弱い生き物を嬲り、征服することが大好きな化け物だった。
最初は、ママのママ。次にママ。次にわたし。ママのパパはパパ。
そうやって支配して、あの男は楽しんでた。その順番がわたしに回ってきて、でもわたしはパパを心底…ううん、本当は。
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今宵で吊るした残骸はいくつ? お薬の成る木は満開。
ママはパパをお片づけ。
CLOSET CHILD CLOSED
クローゼットの中にはわたしの妹。
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